「ネットワークセキュリティリスクにはどのようなものがあるの?」
「ネットワークセキュリティの具体的な対策方法は?」
リモートワークの普及やクラウドサービス利用者の増加に伴い、ネットワークの組織内・組織外の境界が曖昧になってきています。「組織内のネットワークだから安全」とは言えず、組織内・組織外に関係なくセキュリティ対策を実施することが重要です。
本記事では、以下の内容を詳しく解説します。
- ネットワークセキュリティの概要
- 主なリスク
- 安全性を高めるための対策
- セキュリティ強化に役立つツール
本記事を読むことで、ネットワークセキュリティで注意すべき点や、組織が実施すべき対策が分かります。外部からのサイバー攻撃や内部不正など、さまざまなリスクに対応できるセキュリティ対策について知りたい組織の方は、ぜひご一読ください。
ネットワークセキュリティに課題を抱えている組織の方、必見!
ネットワークセキュリティの具体的な対策方法は?
安全性を高める基本の対策に加え、ツールの導入による強化策も検討しましょう。また、脅威を総合的に捉え、必要なセキュリティ対策を検討するための資料もご用意しておりますので、ぜひこちらもご覧ください。
ネットワークセキュリティとは
ネットワークセキュリティとは、ネットワークを介したサイバー攻撃や、内部関係者の不正行為による情報漏えいなどを防止するためのセキュリティ対策を指します。組織が所有する機密情報や個人情報などが外部に漏れると信頼低下や経営悪化などにつながる危険があります。被害を防ぐにはネットワークセキュリティ体制を整備し、継続的に対策を行うことが重要です。
組織を取り巻くネットワークセキュリティリスクには、下図のようなものがあります。
近年はクラウドサービスの利用などによって、ネットワークの組織内・組織外の境界が曖昧になってきており、従来のように境界を基準とした対策を施すだけでは、すべての脅威に対応できなくなっています。通信元にかかわらず、それぞれに適したセキュリティ対策の実施が必要です。
本記事では外部の攻撃者によるリスクと、組織内の従業員や組織の関係者によるリスクに対応するためのネットワークセキュリティについて解説していきます。
ネットワークの種類
ネットワークの種類には、以下の2つがあります。
- オープンネットワーク
- クローズドネットワーク
それぞれセキュリティ上のリスクや行うべき対策が異なるため、違いを知ってネットワークセキュリティの強化に役立てましょう。
オープンネットワーク
インターネットと接続しており、組織外の第三者もアクセス可能なのがオープンネットワークです。組織の公式ホームページやECサイトなどが該当します。
オープンネットワークは不正アクセスやサイバー攻撃、マルウェア感染などの外部脅威にさらされています。外部脅威に対応するには、以下のような対策が必要です。
- ファイアウォールやIDS・IPSの導入
- セキュリティソフト(ウイルス対策ソフト)の導入
- OSやソフトウェアの定期的なアップデート
- 脆弱性診断の定期的な実施
クローズドネットワーク
外部のインターネットと直接は接続しておらず、限られた利用者や拠点間のみを接続しているのがクローズドネットワークです。オープンネットワークと比べて外部からの攻撃を受けにくくはありますが、安全とは言い切れません。また、内部の関係者によって行われる内部不正に十分な注意が必要です。
クローズドネットワークには、組織内データの不正な持ち出しや、システム管理者のID・パスワードの不正入手など、内部不正の脅威があります。脅威に対応するには、以下のような対策が必要です。
- 適切なアクセス権限の付与
- 記録メディア(USBデバイスなど)の使用制限
- 従業員のセキュリティ意識向上を目的とした研修
ネットワークセキュリティリスク
ネットワークの主なセキュリティリスクは、次の4つです。
- 不正アクセス
- DDoS攻撃
- マルウェア感染
- 内部不正
1.~3.は、オープンネットワークを介して発生しやすく、4.は、クローズドネットワークで発生しやすいリスクです。本章では、各リスクの概要や攻撃手法について解説します。
1. 不正アクセス
不正アクセスとは、第三者がID・パスワードを不正に入手して組織内のシステムやサーバーに侵入することです。不正アクセスが行われると、組織の機密情報や顧客の個人情報などを閲覧されるリスクがあります。さらにデータが流出したり、管理者権限を奪われデータの破壊・改ざんなどが行われることもあるため注意が必要です。
ID・パスワードを別のシステムやWebサイトでも使いまわしていると、そちらにも不正アクセスされる危険があります。被害を拡大させないためには、適切なパスワード管理が必要です。
2. DDoS攻撃
DDoS攻撃とは複数のコンピューターから大量にデータを送信し、ネットワークに負荷をかけてサーバーをダウンさせる攻撃です。組織に対する嫌がらせや脅迫・金銭の搾取などが主な目的です。
攻撃を受けるとシステムが使用できなくなって業務が停止したり、ユーザーがWebサイトにアクセスできず販売機会が損失したりします。サーバーダウンの原因調査や復旧などのコストもかかり、経済的損失も発生するでしょう。
また、サーバーが乗っ取られ、別のサーバーに対する攻撃の踏み台として悪用されることもあります。DDoS攻撃を防ぐには、アクセス制限や対策ツールの導入などが有効です。
3. マルウェア感染
マルウェアとは、デバイスに不利益をもたらすことを目的とした悪意あるソフトウェアの総称です。1台でも感染すると、ネットワークを介して組織内全体の端末がマルウェアに感染する危険があります。
マルウェアにはワーム・スパイウェア・トロイの木馬など、さまざまな種類が存在しますが、中でも年々被害件数が増加しているのがランサムウェアです。ランサムウェアは身代金の要求を目的に、データを暗号化して業務の進行を阻害するマルウェアです。そして2019年末頃からは、データの暗号化の復旧に加えて、データを盗み出し、公開しないことを引き換えに身代金を要求する「二重脅迫型ランサムウェア」が登場するようになりました。VPN機器やメールなど、さまざまな経路でネットワークに侵入します。
マルウェア感染を防ぐには、VPN機器やOS・ソフトウェアのアップデート、セキュリティソフトの導入といった対策を行う必要があります。
4. 内部不正
ネットワークセキュリティでは、従業員が悪意を持ってネットワークを侵害したり、組織内のデータを漏えいさせる内部不正にも注意しなければなりません。従業員が、転職時に機密情報を持ち出し、転職先で情報を利用するという事件も発生しています。
また、意図していなくても、従業員のセキュリティ意識や知識が十分でなく、データを誤って流出させてしまうこともあります。
情報が流出すれば社会的信用が低下し、経営に悪影響が出るでしょう。内部不正を防ぐには、組織内のルールの見直しや従業員のセキュリティ研修などが必要です。
ネットワークの安全性を高める4つの対策
ネットワークの安全性を高めるために、以下4つの対策を実施しましょう。
- アクセス制御
- ユーザー認証の強化
- データのバックアップ
- 人材のセキュリティ教育
どれも基本的な対策なので、取り入れていない対策や不十分な対策がないか、よく確認しましょう。
1. アクセス制御
アクセス制御とは、ネットワークやデータにアクセスする権限を制限することです。アクセス制御は以下の3つの機能で成り立っています。
- 認証 ログインできるユーザーを識別し、許可/拒否を判断する
- 認可 認証後のユーザーがシステム内で操作できる範囲を制限する
- 監査 ユーザーのアクセスログを記録する(アクセス制御の検証・改善に役立てる)
許可された権限の範囲でしかアクセスできないため、不正アクセスや内部不正のリスクを低減させるのに有効です。
2. ユーザー認証の強化
アクセス制御をする上で、ログインできるユーザーを識別する「ユーザー認証」の強化も大切です。ユーザー認証はパスワードを用いた認証が一般的ですが、多要素認証を使用することで、よりネットワークの安全性を高められます。
多要素認証とは、知識情報・所持情報・生体情報の3要素のうち、2つ以上の要素を組み合わせて認証を行う方法です。
認証3要素 | 認証方法 |
---|---|
知識情報 | ・パスワード ・PINコード ・秘密の質問 |
所持情報 | ・携帯電話番号(SMS) ・ICカード ・セキュリティトークン |
生体情報 | ・指紋 ・声紋 ・静脈 |
近年はサイバー攻撃の件数が増加しており、攻撃のレベルも上がっているため、ユーザー認証を強化して安全性を高めることが重要です。
3. データのバックアップ
マルウェア感染やデータの破壊、ネットワーク障害などに備え、データを定期的にバックアップすることが重要です。バックアップがあれば、トラブルが発生してシステムが停止した際に、比較的早く復旧できます。
なおバックアップに使うUSBデバイスや外付けハードディスクなどの記憶媒体は、バックアップ時以外は端末に接続しないように注意しましょう。接続したままだと記憶媒体に保存したデータも暗号化・破壊され、復旧できなくなります。また定期的にバックアップデータを確認し、問題なく復旧できるか検証することも大切です。
4. 人材のセキュリティ教育
ヒューマンエラーによるセキュリティインシデントを防ぐために、セキュリティ教育を実施して従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることも重要です。パスワードの取り扱いやマルウェア対策など、少し気を配るだけで防げる事故は数多く存在します。
セキュリティ教育は単に資料を渡すだけでは理解が深まらないため、定期的に研修を実施してルールを遵守させるようにしましょう。ネットワークセキュリティのリスクは次々に新しいものが生まれているため、研修内容は毎回見直し、最新情報を反映させることも大切です。また理解度テストを行い、研修内容がしっかり身に付いているか確認しましょう。
ネットワークセキュリティ強化に役立つ5つのツール
ネットワークセキュリティを強化するには、以下5つのツールを活用するのがおすすめです。
- ファイアウォール・IDS/IPS
- セキュリティソフト
- VPN(仮想プライベート・ネットワーク)
- DLP(Data Loss Prevention)
- 脆弱性診断ツール
ツールの特徴や、導入がおすすめの組織について紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
1. ファイアウォール・IDS/IPS
ファイアウォールとは、IPアドレスやポート番号を確認し、外部ネットワークから内部ネットワークへの通信を制限するツールです。インターネットと組織内のLANとの間に設置し、不正アクセスを防ぎます。
一方でIDS/IPSは、OSやミドルウェア層に対する不正侵入を検知・防御するツールです。ファイアウォールと異なり、通信の中身までチェックして正常か不正か見分けるため、DDoS攻撃などの対策に有効です。
ファイアウォールとIDS/IPSは、ネットワークを活用する上で必要不可欠なツールです。まだ取り入れていない組織は、早めに導入することをおすすめします。
ファイアウォール・IDS/IPS | |
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特徴 | • ファイアウォールはネットワーク層への攻撃を防げる • IDS/IPSはOS・ミドルウェア層への攻撃を防げる |
どのような組織におすすめか | • 外部のネットワークから行われる不正アクセスや攻撃を防ぎたい • 不正アクセス・DDoS攻撃の対策がしたい |
2. セキュリティソフト
セキュリティソフトとは、コンピューター内のマルウェアを検知・駆除できるツールです。また、受信メールにマルウェアが含まれていないかチェックして警告を出したり、悪意あるWebサイトへのアクセスを制限したりしてマルウェア感染のリスクを下げる機能も有します。
近年はランサムウェアをはじめとしたマルウェアによる攻撃が増加しているため、対策は必須と言えるでしょう。感染すると業務が停止したり復旧にコストがかかったりするため、被害にあわないよう、セキュリティソフトを導入し、常に最新の状態にしておくことが重要です。
セキュリティソフト | |
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特徴 | • コンピューターに潜むマルウェアを検知できる • マルウェアに感染した場合、感染源を特定して駆除できる |
どのような組織におすすめか | • マルウェア感染の対策がしたい • ファイルの内部にマルウェアが含まれているかどうか確認したい |
3. VPN(仮想プライベート・ネットワーク)
VPN(仮想プライベート・ネットワーク)とは、送信・受信側の両方に専用機器を設置して仮想専用線を構築し、通信を安全に行う仕組みです。通信内容やIPアドレスなどの情報を暗号化でき、第三者による盗聴を防ぎます。
自宅や公衆のWi-Fiを使用して組織内ネットワークにアクセスする際にも安全性を保てるため、リモートワークを導入している組織はVPNを取り入れるとよいでしょう。
VPN(仮想プライベート・ネットワーク) | |
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特徴 | • 通信情報などを暗号化し、通信の安全性を高める • 組織の拠点間をつなぎ、データのやり取りをスムーズにする |
どのような組織におすすめか | • 通信の安全性を高めたい • リモートワークを導入している |
4. DLP(Data Loss Prevention)
DLP(Data Loss Prevention)とは、機密情報など重要な情報のみを識別して、紛失や流出を防止・阻止するツールです。操作ミスや不正操作によってデータを外部へ送信したり、機密データをUSBデバイスにコピーして持ち出そうとしたりするのを防ぎます。
サイバー攻撃や内部不正により、組織が持つ機密情報が流出すると、社会的信用を失ったり経営が悪化するなど、大きな影響を受けます。特定の重要なデータそのものを監視し、送信やコピーを制限することで情報を保護したい場合は、DLPを導入するとよいでしょう。
DLP(Data Loss Prevention) | |
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特徴 | • サイバー攻撃や内部不正などによる情報漏えいを防止・阻止する • 特定の文字や情報を登録することにより、その情報の漏えいを防ぐ |
どのような組織におすすめか | • 内部・外部からの情報漏えいリスクを低減したい • 漏えいを防ぎたい情報が明確に存在し、その情報に特化してセキュリティを強化したい |
5. 脆弱性診断ツール
脆弱性診断ツールとは、WebサイトやWebアプリケーションに潜むセキュリティ上の欠陥や、設定ミスを早期に発見するためのツールです。攻撃者に狙われやすい欠陥を見つけ、対策をすることで不正アクセスやマルウェア感染などのサイバー攻撃を未然に防ぎます。
近年は手動でしか行えなかった診断が行える高機能なツールもあるため、高確率で脆弱性を検知することができます。手間やコストをかけずにセキュリティレベルを向上させたい場合は、脆弱性診断ツールの導入がおすすめです。
脆弱性診断ツール | |
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特徴 | • Webサイトのセキュリティ上の欠陥を早期に発見する • IPAなどの基準に沿った脆弱性対策ができる |
どのような組織におすすめか | • 多様化・高度化しているサイバー攻撃に対応したい • 手間やコストをおさえたセキュリティ対策がしたい • 多くのWebサイトを運営している |
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まとめ|対策を強化してネットワークセキュリティを向上させよう
ネットワークに潜むリスクには、組織外の第三者によるサイバー攻撃など外部からのリスクと、従業員による内部不正など内部からのリスクがあります。セキュリティ対策が不十分だと情報漏えいなどのリスクにつながるため、対策の見直し・強化が欠かせません。
ネットワークセキュリティを実施するには、以下の4つがあります。
- アクセス制御
- ユーザー認証の強化
- データのバックアップ
- 人材のセキュリティ教育
どの対策も基本的なものなので、取り入れていない対策があれば実施しましょう。
また、ネットワークセキュリティを強化するツールには以下のようなものがあります。
- ファイアウォール・IDS/IPS
- セキュリティソフト
- VPN(仮想プライベート・ネットワーク)
- DLP(Data Loss Prevention)
- 脆弱性診断ツール
上記のツールを導入すれば、ネットワークを介した不正アクセスやマルウェア感染などの被害にあうリスクを低減することができます。求めるセキュリティによって優先して導入すべきツールが異なるため、それぞれの特徴や対応できる範囲をよく確認して選びましょう。